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火曜日の朝。

前の日に、楽しいことがあった次に日というものは、いつもより憂鬱なものである。

カズキ:「お姉ちゃん!今度いつ来てくれるの?」

私の腰に抱き着きながら、泣きじゃくったカズキの感触がまだ残っているような気がする。

窓から見える空を見ると、深夜から降り続ける雨でぼんやりとした濃いグレーの色になっている。

床に直に置かれたテレビをつけ、乱れた髪を整えながら、テレビから流れる芸能ニュース‥
芸能人の浮気が発覚?なんで、こんなニュース流すんだろう?全然興味がない…そんな内容ばかりでうんざりだ。

鏡に映し出された自分を見て、思わずため息が出てしまう。
脱力感が抜けない、休みたい。

メイクを重ねていくたびに、その脱力感をごまかしていくように、myuは気持ちを切り替えていく。

ドアを開けると、遠くで聞こえていた雨の音のボリュームがあがり、耳をつんざく

‥‥

おはようございます!

精一杯取り繕った笑顔で入ったものの、待機室の中もどんよりとした雰囲気だ。雨の日はいつもより客の入りが悪く、出待ちの女の子はいつもより増して多くいる。

店長:「ルミさん、おはようございます!1本目の予約なんだけどキャンセルなっちゃた。」

ルミ:「わかりました」

これも雨の日にはよくあること…

仕事で気を紛らわしたいのに、こんな気分の日に自分の思い通りには、なかなかならないものである。

雨の日は、客の入りが悪い上に、予約のキャンセルも多くなる、律儀に連絡してくる客はごくまれで、ほとんどの客は、決められた時間まで来なかったらキャンセル‥これがこの店のルールである。

当然売り上げも落ちてしまう。

ようやく入った今日の1本目。

いつものように客が待っている部屋にを開ける

「こんにちは~!♪‥‥(あっ、こいつ‥)」

何年か前に、付き合っていた男が…どこで調べたのか分からないが…

男:「久しぶり、ここで働いていたんだね。」

ルミ:「えっ?ここでって?風俗はこの店でしかやったことないけど。」

男:「実結だろ?元気にしてた?」

とぼけたふりをしても、どうやらダメなようだ。

ルミ:「じゃぁ時間がないから服脱いで、寝そべってください。」

男:「いいよ、話しよ。」

ルミ:(最悪‥あ~面倒くせ~)

たった20分で、よりを戻そうと思っても時間なんて足りない、延長を申し込んできたが、次の予約があるからと断った。

私の脳裏には、すでにこの男の事なんて全くなかった。
逆に、嫌な思い出を、よみがえさせられた気分である。

どうして、男はこうして、いい事だけを切り残せるのだろうか…

私は無理だ…店長にこの客を出入り禁止にしてもらう事もできるが、名前を変え、店長もいちいち顔も覚えられないし、結局はいたちごっこになってしまう。

今日は最悪の日だ…嫌なことは続くものである。

接客を終え、控室に入ると珍しくマキが出待ちをしていた。

マキ:「今日はダメ‥キャンセルばっか‥」

ルミ:「私も‥」

  「マキ、今度ホストクラブはいつ行くの?」

マキ:「うーーん‥金曜かな?えっ?行く気になった?」

ルミ:「ちょっと社会見学がてらに行ってみようかな(笑)」

マキ:「マジ!?じゃぁ気が変わらないうちに、今日行こ!」

ルミ:「今日!?まっどうせ今日は付かないから、じゃぁ行こっか!」

2人とも、仕事を早く切り上げて…

投げやりになった訳ではないけど、どうしてもこのモヤモヤっとした気分を少しでも晴らしたかった。

マキは、一人の客を店に連れて行けることで上機嫌だ。

そうすることで、マキが入れあげているホストの成績を上げることが出来る。

でも…行ったはいいのだがmyuの心は全然晴れなかった。

きれいな顔をした男たちがおもてなしをして、気分はいいのだが

どこか‥(どうせ仕事だろ)という気持ちがぬぐいきれなくて、楽しめない。

マキがそこで、大金を払っている姿を見て、余計に冷めてしまう。でも私が行ったことによりホストのサービスも、今まで以上にサービスをしてくれたようだ。彼女は上機嫌。

マキと別れて、帰ってきた自分が住むマンションの前

雨は降り続け、アスファルトには薄っすら雨水で幕を張りしずくが一面跳ね続けている。

空を見ると、雨で真っ黒になって月は見えない

myuの心も晴れないまま

誰も居ない部屋で

「ただいま」

誰も、おかえりと言ってくれない。